【企業調査の基本】企業の売上高や営業利益高は比較&分析の徹底が大事!

 

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決算の時期になると多くの企業の売上高や営業利益がわかります。
ただ、これらの数字の見方を知っている人はあまり多くないです。

実は、ただ数字を知ってるだけでは何も意味がありません。
数字を点・線・面で考えて初めて、数字に命が吹き込まれていくのです。

今日は僕の尊敬する人に教えてもらった会社の数字の見方を書いていきます。

数字の点と点をつなげる

一時、台湾企業の鴻海(ホンハイ)精密工業が7000億円でシャープを買収するというニュースが世間を賑わしました。
※後日追記:2016年8月12日にシャープは鴻海精密工業に買収されました
(鴻海精密工業:世界を代表するEMS企業。EMS企業とは、電子機器を受託生産する企業のことで、製品を作るメーカーに代わって製品の設計から試作、生産、発送、修理業務までを一括して受託するビジネスモデルのこと。ソフトバンクからはペッパー、アップルからiphone6の組み立てを担っている。)

こんとき、数字でモノを考える癖がある人は、
「シャープが買収されたら、ホンハイの売り上げ高いくらになるんだ?」ということに意識がいきます。

そこで、決算書を調べると、ホンハイは15兆円で、シャープは3兆円だということがわかりました。
つまり、18兆円企業が誕生することになります。

しかし、18兆円という数字だけではまだピンとこないですよね。
なぜなら、この数値がどれぐらいの大きさを示したものなのか、判断のしようがないからです。
つまり、単なる点の情報にすぎません。

そこで、重要なのが「比較」です。
2015年度の日本の大手電機メーカーを中心に売り上げ高をまとめて、比較してみました。
こうすることで、点の情報が他の点の情報と結びつき、線の情報になります。

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表を見ると、日立製作所の10兆円が日本電機メーカーで最も売上高を誇っていることがわかります。
10兆円かーすごいなーと思って、アップルを見てみると、えっ!?


28兆円!?!?

稼ぎスギィ!!

(ちなみに、去年は約22兆円。かなり伸びましたね。)

取り乱しました。
本題に戻ります。
世界を主導するサムスンが20兆円なので、シャープ+ホンハイはサムスンと同程度の企業になることがわかります。

ホンハイは日本ではあまり知名度がないため、「ホンハイがシャープを買収」と聞いても、ガリバー企業が誕生するイメージが沸かないかもしれません。
しかし、実は日本トップクラスの企業を凌駕する企業の誕生なのです。

続いて、各企業の営業利益率を調べてみましょう。
ここらも面白いことがわかってきます。

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なんと、ホンハイ+シャープ連合の営業利益率は著しく低いのです。

ホンハイの昨年の営業利益は約4000億円。
対してシャープの営業利益は、▲2000億円です。
2015年ベースですが、両社が統合すると、営業利益は2000億円になります。
営業利益を売上高の18兆円で割った営業利益率は、わずか1.6%。
元々が3.2%と決して高くないのにもかかわらず、さらに悪化しました。

他の企業を見てみましょう。
日立製作所は6.2%。立派です。

そして、、、

 


アップルは圧倒の30%!!
もう詐欺でもしてんるんじゃ・・・
さすが、リーディングカンパニーは違います。
(ちなみに、我らがトヨタは売上高27兆円の営業利益率は10%です。規模は同じですが、利益は大きな差がありますね。)


このデータを見て、

①ホンハイはなぜこんなにも営業利益率が低いのか?
②なぜ営業利益が減るにもかかわらず、シャープを買収するのか?

という疑問が湧いてきます。

理由は簡単。
色々調べたところ、以下の2つが大きいことがわかりました。

一つ目は、ホンハイはEMC企業のため、安く製品を提供しなければならないからです。
アップルやソフトバンクは、一番安く製品を製造する企業に依頼します。

なので、ホンハイは必死こいて安い価格を提供しようとしますよね。結果、他社との価格競争が起こり、利益が減少します。
一方、アップルやソフトバンクはブランド価値が高く、iTunesを始めとしたプラットフォームの一部としてハードを売るので、利益を多く乗せてもバンバン買ってもらえます。
だから儲かるのです。

この現状への打開策がシャープ買収になります。
シャープを買収することで、アップルのように自ブランドの製品に利益を乗せられるようになりますよね。

そして、二つ目は、有機ELディスプレイの量産ができるようになるからです。 

最近ホンハイはアップルのiPhone2016/2017年モデル向け液晶パネルの受注を逃しました。
アップルはいいお客様なので、何としてでももう1度アップル向けに製品を製造したいはずです。
しかし、問題があるのです。
2018年モデルのiPhoneには有機ELディスプレイを搭載する予定で、ホンハイは有機ELディスプレイを量産する技術がありません。

そこで、シャープに白羽の矢がたったのです。

業績が悪いシャープですが、こと有機ELディスプレイの技術に関しては、とても進んでいます。
なので、シャープが持っている有機ELディスプレイの技術が喉から手が出るほど欲しいという事情があるのです。
7000億円出資して、業績が悪化しても欲しいのです。
将来への投資なのでしょう。

いかがでしょうか。
数字を線にしていくことで、シャープ買収の実情がリアルにわかってきました。

次にこの線の情報を面にしていきましょう。

線と線を繋げて、面にする

数字でもモノを考える癖がある人は、ここでもう1歩踏み込んで、こんな知的好奇心のアンテナが働きます。

「台湾って小国なのに、どうやってこんなマンモス企業ができたのだろう?」と。

調べてみると、台湾のGDPは、50兆円で日本の約8分の1。
人口は2300万人。日本の6分の1。
そして、ホンハイの従業員は130万人。
(ちなみにトヨタは30万人)

GDPや人口が小規模なのにもかかわらず、かなり大規模な企業が誕生している。

そこで、従業員数の割合を調べてみると、中国が54万人、台湾の本社は4000人だということがわかりました。

つまり、従業員の約半分が中国にいるんですね。台湾の拠点は司令塔的な役割を果たしているのでしょう。
このことから、色々なことがわかります。
ホンハイは、各国のメーカーと中国の工場の橋渡し的存在であること。
そして、最近、中国の賃金が6年前から2倍というニュースがホンハイにかなり影響を与えていること。
人件費が上がれば、もちろん製造コストが上がりますから。
もしかしたら、アップルからの受注を逃したのも、中国の賃金増による製造コストの悪化が原因かもしれません。
このまま、受注生産をしていても、ジリ貧なんだなということが読み取れますね

こうして、ホンハイとシャープが統合したときの売上高の数字を、他の数字と結びつけて比較してみることで、ホンハイ&シャープが世界市場の中で置かれているポジションが見えてきました。
1本の線だった情報が他の線と結びついて、面になったのです。

「なるほど、ホンハイもシャープも付加価値の高い製品なくして、発展はないんだ」ということが改めて実感できます。

たしかに、「高付加価値ビジネスなくしては生き残れない」ということは、どこの経済紙を読んだって書かれているし、それを読めばわかったような気になれます。
しかし、数字を丹念におっていくことによって、その正確な状況を掴むことができ、実感を得ることができるのです。

まとめ

新聞や企業の決算書などを読んでいるときに、少しでも気になる数字が出てきたときは、「ふ〜ん」で終わらせないことが大事です。
その数字の意味や価値を掴むために、他の数字と結びつけ、線や面へと展開することを心がけると数字を多面的に捉えられるようになります。
是非これを心がけて色々な数字を見比べてみてください。 

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