ビバリーヒルズでヒッチハイクして、大富豪になる秘訣を訊いた話

 

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気付いたら、ビバリーヒルズに住む富豪のメルセデス・ベンツに座っていた。

 

ビバリーヒルズの住民にインタビューしにいこう

それは、何気ない疑問から始まった。

「ビバリーヒルズの住民ってなんであんなにお金持ちになれたんだろ?」

アメリカでの留学先がビバリーヒルズに近く、しょっちゅう見学しにいってた僕は

「ビバリーヒルズの住民は一般人と何が違うのか」ずっと気になっていた。

同じく留学していた友達に聞いてみた。

「さーなんでだろうね。特別なことでもやってんのかね」

そりゃ分かるわけがない。でも僕はもう我慢出来なかった。

「ってか、聞きにいこうよ。それが手っ取り早い」

「え、まじで?」


こうして、ビバリーヒルズの住民に成功の秘訣をインタビューすることを決めた。

どうせやるなら、50人くらい聞き出してやろう。そんな野心を抱きながら。

本当にこれ家なの・・・? 

ビバリーヒルズへの道を抜けると、自分がちっぽけに見えた。
ビバリーヒルズを歩いてると、豪邸が待ち受けている。

 

(門から家まで遠すぎじゃないですか・・・)

 

(ごつい)

 

 (ディズニーランドのアトラクションですか・・・)

日本とは桁違いの家のデカさについつい笑ってしまう
極め付けはこれだ。

 


ただの公園のように見えるが、2枚目の写真の柵にある看板を見てほしい。
"PRIVATE PROPERTY"
そう、ここは住民の所有地なのだ。
通りかかった人に聞いてみると、どうやらこれの隣に住んでいる80歳のおじいちゃんが朝に散歩するための庭らしい。
80歳のおじいちゃんが散歩するための庭って・・・
そこら辺の道でええですやん・・・。
僕にとっては、想像を絶する感覚だった。

ここまですごいと、どうせビバリーヒルズといっても鎌倉みたいな都心から離れているじゃないないの?と思ってしまうかもしれない。

しかし、驚くなかれビバリーヒルズは、高級ブランドが軒を連ねるロデオ・ドライブや都心部から車で15分だ。
ビバリーヒルズの住民の財力を知れば知る程、好奇心を抑えられなくなった。

 


ここまでの財産を築くにはどうすればいいのか?
僕達は意気揚々と住民にインタビューしにいった。

あなたはどうやって成功したんですか?

改めて見ると、ばかでかい家に僕はただただ圧倒された。

しかも、アメリカは銃社会で、訴訟大国だ。
怪しいことをすれば、自分の身が危ぶまれる。
今まで何気なく押していたインターホンをちょんと押すだけでさえもとてつもない緊張感に襲われた。

(怖気づいている様子)

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しかし、莫大な財産を築く術への求知心はそれを凌駕した。

 

ピンポン♩

 

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奥さん「ハロー?」
僕「初めまして。僕は今UCLA(留学先の大学)に留学中で、今ビバリーヒルズに住んでいる方にインタビューをおこなっております。宜しければ協力して頂けませんか?」
奥さん「興味ないわ」
ブツッ・・・ 

人生初めての突撃インタビューの味はコーヒーのように苦かった。
そんなに簡単だったらやりがいがないってもんだわ。
次だ次。
頑張って気持ちを取り戻して、

ピンポン♩
奥さん「どちらさま?」
僕「初めまして。僕は今UCLA(留学先の大学)に留学中で、今ビバリーヒルズに住んでいる方にインタビューをおこなっておりm」
奥さん「NO!!」
ブツッ・・・

強い拒絶にさっきまでの高揚感は下がり始めた。
まぁ、まだ2件だし、何件か訪問すれば聞けるでしょ。
心を無にして片っ端からピンポンしまくった。

ピンポン♩
僕「インタビューしにきました」
奥さん「帰って」

ピンポン♩
僕「インタビューしにきました」
奥さん「あっそ」

ピンポン♩
僕「インタビューしにきました」
奥さん「一昨日きやがれ」

ピンポン♩
僕「インタb・・・」
ブツッ

くっそぉぉ!!!
ここまでくるとついに頭の中のリミットが壊れた。

もうどうでもいいや!!ぶっ壊れた僕は、北斗の拳のケンシロウが秘孔を押しまくるかのように、インターホンを押しまくった。


アタタタタタタタアアアアアーーー

 

 

ピンポン♩ ピンポン♩ ピンポン♩

0勝40敗。
真夏の中を徒歩で1件1件訪問したせいで、汗が額からしたたり落ちていた。

「どうしてここまで失敗するんだろう・・・」
ものすごい拒絶反応をくらったせいで、しっかり気持ちもめげてしまい、家に帰りたくなった。

それでも諦めたくなかった。

そこで、今までの失敗を分析した。 
今までの訪問全部が奥さんかメイドさんらしき人に断られていて、男の人や旦那さんと話せていなかった。
原因はそこだと思った。
旦那さんのほうが自分の実績を話したがるだろうし、
何よりも警戒心も女の人より無いにちがいない。
ただ、どうすれば、旦那さんといきなり話せるだろうか・・・・。

問題が分かっても、それを成し遂げる方法が無ければ意味が無い。
洗車中。ランニング中。散歩中。 様々なケースを考えて、そこらへんを探したがそんな人はいなかった。

当初の目標と違い、全くうまくいかない状況が腹立たしかった。

そうだ、ヒッチハイクしよう

 

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そのアイデアは、何のきっかけもなく、脳内に舞い降りてきた。
そうだ、ヒッチハイクすれば旦那さんと会話出来る可能性が高いんじゃないか。
もちろんヒッチハイクなんて人生で一度もしたことがなかった。
脳内で大会議が始まった。

「アメリカなら大丈夫か・・・」

「でもここ、ビバリーヒルズだぞ・・・?」

異国の土地で今までやったことがないことに挑戦することが不安だった。
でも、もうこれしかない。
そんな思いで僕は静かに親指をあげた。
そこからの光景に自分の目を疑った。
タイミングが合わなくて乗れなかったものの、親指を上げて五分でBMWやAudiが止まろうとした。

止まる・・!止まる・・・!止まるぞ!!! 高級車だって関係ない!止まる!!
ドクンッ!ドクンッ! 胸が喜びと高揚感に包まれて、心臓の高鳴りを感じた。

その瞬間、目の前にメルセデス・ベンツがすっと目の前に止まった。

「迷子かい?乗っていきな?」

イラン人?ユダヤ人?いずれにしろ中東の血が入っているのは明らかだった。
薄い紫のシャツを身に纏い、サングラスをかけていながらも、その奥に優しい瞳をこちらに向けているが分かった。

"余裕"この人を漢字二文字で現すとしたら、この言葉がぴったりだと思った。

「はい!そうなんです!お願いします。」

計画通り。
自分の思惑が成功した味を噛み締めながら、僕たちは車に乗り込んだ。

ここに住みたきゃ、やることは1つしかないよ

 

「どこにいきたいんだい?」

この優しい人はジョンということが分かった。
どうやらこれから奥さんとショッピングに行くらしい。

「Broaden St.でお願いします。そこで友達と落ち合う約束なんです」

もちろん嘘だった。
こうやってビバリーヒルズの端から端をヒッチハイクし続け、インタビューしまくる作戦だからだ。

「オッケイ。じゃいこうか」

ブォオオオオオオオン。
ベンツのエンジンが静かに、されど力強く唸って車は走り始めた。

 

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Broaden St.まで車で10分程。
あまり時間はないなとおもった僕は、軽い自己紹介を済まして早速本題に入った。

僕「ジョン。僕は留学してからビバリーヒルズによく来るんだけど、ここの人達はどうやってここまで金持ちになったのか不思議でしょうがないです。実際に住んでみて気付いたことってあったりしますか?」

「良い質問だね。君は何でだと思う?」

にやりとしながらジョンは聞いてきた。

僕「日本人的な考えになってしまうけど、やっぱめちゃくちゃ働いたんじゃないかなと思います。 死ぬ程働いた結果の対価がここまで大きくなったんじゃないのかなって。」

ジョン「間違ってはいないけれど、大切な要素を抜かしているよ

僕「大切な要素?」

ジョン「ああ。世の中には必死こいて働いている人はいっぱいいるよ。だけど、彼等が皆成功しているわけではない。その理由はこの大切な要素が抜けているからだよ」

僕「なるほど。それってなんですか?」

ジョン「その話をするためにも、私の過去を軽く話そうか。私はイラン出身なんだ。イランで何不自由なく育った。でも私が13歳の時に戦争が起こった。それは身の毛もよだつほど厳しくて激しい戦争だった。」

ジョン「私の父親はこのままでは、家族皆が命を落とすと感じたんだろう。なけなしのお金を使って、私をアメリカに送り出してくれたんだ。」

ジョンの声が微かに震えているのがわかった。
見ず知らずの人に、自分の生い立ちを話してくれるジョンの器の大きさに私は感服した。

ジョン「つらい別れだった。でも、親の”お前だけでも生きていてくれ”と泣きながら私に懇願してくる親に私は逆らうことができなかった。そうして私は叔父の住むアメリカに単身で渡った。結局、何も出来なかった自分に心底絶望したよ。」

戦争体験者の話を生で聞くのは初めてだった。 テレビや新聞ではなく、直に体験者から聞くことで一気に戦争がより身近な物に感じた。

ジョン「アメリカの記憶を遡っても決して楽しい記憶ではない。裕福でない叔父の所に住むことになった私は、学校にいきながら働かなければならなかった。色々やったよ。庭師、皿洗い、ベルボーイ、清掃員、ウェイトレス。金が手に入るなら何でもやった。」

ジョン「そうやって高校を卒業した。戦争の体験から私は絶対に成功しようと思った。時として人はグワンと深い穴に雪崩落ちるかのような状況に追い込まれるものだ。そのためにも、自分ができること、自分の力を最大限にしておけば、そういった状況に対してしっかりと対応出来ると思ったからだ。」

ジョン「ただ、こんな仕事をやっていてもそんな夢は実現出来ないと思った。そこで観察しまくったんだ。金持ちを。高級ホテルのベルボーイになって、金持ちを観察しまくった。そしたらあることが分かったんだよ。」

僕はもう話に引き込まれていて、固唾を飲んで次の言葉を待った。

ジョン「それは何かを作ることだ。創作だよ。金持ちは何かしらを作り上げているんだ。ビバリーヒルズの人達を見ても、それは変わらない。ただ彼等は周りの人が喜ぶような物を一生懸命作っている。そこが大きな違いだ。」

僕「作るですか。」

ジョン「そうだ。作る物はなんだっていい。映画、土地、小説、レストラン、金融商品なんでもいいから作り出すんだ。私もそれに気付いて、レストランを立ち上げなければここまで裕福になることはなかった。もちろん、何も作らないでここに住む人はいるよ。ただそういった人達は往々にしてここを直ぐに去っていくけどね。」

ビバリーヒルズの実情を知っている男からの言葉は力強かった。

「何かを作る」か・・・。

ジョン「だから、君たちも何かを消費してるだけの人生は辞めなさい。消費しているだけじゃ、知らない他人を裕福にしているだけだよ。もっと自分で生み出すんだ。消費じゃない創作だよ。そして、その創作に情熱を傾けてごらん。それで周りが喜んでもらうんだ。なんでもいいから一つ最高にエキサイティングな物を作ってみなよ。」

ジョン「ほらついたよ。ついつい長話してしまったね。」

いつのまにか目標地であるBroaden St.に着いていた。

すごく良い話を聞けた・・・。

感謝の気持ちでいっぱいになった僕はジョンをだましてヒッチハイクをした自分を情けなく思った。
何かお返しをしたい。
けど、何が出来るだろう。
こんな裕福な人に一般人である僕に出来ることあるだろうか? 必死に考えた。

その瞬間、友達の一眼カメラが目に入った。

僕「ジョン、今日は本当にありがとう。大したことはできないんだけど、僕の友達のカメラは中々良いカメラなんだ。良かったら、君たち夫婦の写真を撮らせてくれないかな?きっといい写真が撮れると思うんだ。後で、メールで送るよ。」

ジョン「そりゃいいね。お願いするよ。」

こうして、ジョンとの短いヒッチハイクは終わった。
ジョンを見送った後、僕は友達と目を合わせ、互いに何も言わないままバス停に向かった。 本当は50人インタビューするつもりだった。
けどもう充分大事なことは聞けたと二人とも感じていた。

 

消費するんじゃない。何かを作れ。そして、そこに情熱を

 

 

 

貴重な話をしてくれたジョン。

本当にありがとう。

 

(この記事はstorys.jpより転載しました。)

 

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